基本的に胃底腺ポリープが自然に消えることはありません。 しかし、過形成ポリープはピロリ菌の除菌治療を行うことによって数が減ったり、小さくなったりすることがあります。
胃ポリープは、正式な病気の名前ではなく、胃粘膜の表面にできるイボのような病変の総称です。
20代の若い世代で発生することもありますが、60代以降の高齢の方に多く見られるのが特徴で、自覚症状がほとんどないことから、自治体や会社などの集団検診で初めてポリープが見つかるケースが多くなっています。
基本的にポリープは良性の病変であり、それほど心配することはありませんが、大きくて出血を伴うようなものは切除が必要になることがあります。また、稀に悪性化するケースもあるため、検査で指摘された時には詳しい検査を受け、どのような性質のポリープなのかをしっかり調べておくことが大切です。
胃ポリープは、粘膜の組織の一部が変化し、局所的に盛り上がっている「できもの」です。
通常、胃粘膜の表面(上皮)にできる良性の病変を指しますが、粘膜の中にできた腫瘍(粘膜下腫瘍)や胃がん(悪性腫瘍)なども含め、胃の内部に発生する「できもの」を広く総称して胃ポリープと呼ぶ場合もあります。
胃ポリープは、胃粘膜に起きた炎症が修復される際、粘膜上皮が過剰に作られて発生すると考えられていますが、はっきりとした原因が分からないケースも少なくありません。
ポリープにはさまざまな形態をとるものがあり、なだらかに盛り上がる「扁平型」、キノコのような茎を持つ「有茎型」、茎のない「無茎型」、そしてその中間である「亜有茎型」という4つの型に分類されます。また、その大きさも2~3mmの小さなものから3cmに及ぶ大きなものもあり、1つだけ単体で発生することもあれば、複数のポリープが多発するケースもあります。
通常、患者さんに自覚症状はなく、そのままでも心配ない場合が多いですが、ポリープが大きい場合(2cm以上)や出血などが見られる場合には切除を検討します。
また、頻度は高くないものの、稀にがん化したり、病変の一部にがんを含んでいたりするケースもあるため(がんの併存)、疑わしい場合には詳しい検査でポリープ内の状態を確認する必要があります。
胃ポリープには、大きく分けて「胃底腺ポリープ」「過形成性ポリープ」「腺腫性ポリープ」という3つのタイプがあります。
その中でも、胃底腺ポリープと過形成ポリープの2種類が多くを占めています。
胃底腺ポリープは周囲の粘膜と同じ色調をした2~3mm程度のポリープで、表面は丸くつるっとしています。比較的女性に多く見られるのが特徴で、胃の上部(胃底部)や中央部(胃体部)に多く発症し、複数のポリープが多発するケースも少なくありません。
胃底腺ポリープは粘膜の萎縮がなく、ピロリ菌のいない胃に発生するのが特徴です。ピロリ菌が陰性の場合、胃がんになる確率も低くなることから「ハッピーポリープ」と呼ばれることもあります。基本的に患者さんに自覚症状はありませんが、胃食道逆流症(GERD)の治療で使用される「プロトンポンプ阻害薬(PPI)*1」の服用により、ポリープが大きくなったり、数が増えたりすることが報告されています。
*1 プロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸の分泌を抑制する胃薬
「腐ったイチゴ」と表現されることもある濃い赤色をしたポリープで、胃のあらゆる部分に発生することがあります。有茎型や亜有茎型のものが多く、2~3mmのものから3cmに及ぶものまで大きさはさまざまです。また、1つだけポツンと発生する場合もあれば、複数のポリープが発生する場合もあります。
基本的に過形成性ポリープも無症状ですが、稀にポリープの表面から出血が見られることがあります。粘膜に多数のポリープがある方で、透析治療を受けていたり、血液を固まりにくくする薬(抗凝固剤、抗血小板薬など)を飲んでいたりすると貧血を引き起こすケースもあります。
過形成性ポリープは、ピロリ菌に感染した「萎縮性胃炎*2」の方に多く発症するのが特徴で、胃粘膜の傷が修復・再生する際、一部の細胞が過剰に増殖してポリープになると考えられています。ピロリ菌陽性が判明した場合、ピロリ菌の除菌を行うことでポリープが小さくなったり、消失したりするケースがあります。
過形成性ポリープが、がんになる可能性は低いですが、稀にがん化するケースもあるため、疑わしい場合には組織を取って検査を行うとともに、定期的な経過観察が必要になります。
*2 萎縮性胃炎:ピロリ菌感染により、胃粘膜が薄くなって萎縮する状態で、空腹時の胸やけや食後の胃もたれなどを伴う。
白っぽくなだらかに盛り上がった扁平型のポリープで、「アデノーマ」とも呼ばれます。
ピロリ菌感染が進み、「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)*3」の起きている胃に発症するのが特徴で、女性よりも男性に多く、特に高齢の方に多く見られます。
*3 腸上皮化生:ピロリ菌感染が進行し、胃粘膜が腸の粘膜のような上皮に置き換わること。
腺腫性ポリープも基本的に無症状であり、多くは良性のままです。しかし、中には将来がん化するものや、病変の一部にがんを含むようなものがあるため(がんの併存)、組織を取ってポリープの性質を詳しく調べる必要があり、がんの疑いが高いと考えられる場合には切除を検討します。
胃ポリープの診断には以下のような検査を行います。
造影剤(バリウム)を使用し、胃の中の撮影を行います。
病変部の凹凸が周囲に比べて黒く映る所見(透亮像:とうりょうぞう)からポリープを見つけることが可能です。
バリウム検査は集団検診などでも多く行われていますが、あくまでも胃の異常を広く拾いあげるための「スクリーニング検査」であり、ポリープのタイプまで確認することはできません。そのため、ポリープが発見された時は改めて内視鏡検査を行い、どのような性質を持つポリープかを調べる必要があります。
胃の中を空っぽにした状態で、鼻や口から直接胃の中に内視鏡(スコープ)を挿入して内部の状態を観察します。カメラに映った画像から胃の粘膜の状態やポリープの色や形、大きさなどを観察することで確定診断が可能です。
当院の内視鏡検査は、青や緑といった波長の短い光を照射する「NBI内視鏡システム」を搭載しているのが特徴です。波長の短い光は胃粘膜表層の血管を鮮やかに浮かび上がらせる性質があり、早期の胃がんなども見つけ出すことができるため、より精度の高い診断が可能です。
当院では鼻からスコープを挿入する「経鼻内視鏡検査」を行っているのが特徴で、高画質でありながら約5mmという細いスコープを使用することで吐き気などの不快な症状を感じることなく検査を受けていただくことが可能です。また、ご希望により鎮静剤や鎮痛剤を使用することも可能です。(※使用当日の車やバイク、自転車等の運転はお控えください。)
◆当院の胃カメラ検査の詳しい内容は、「胃カメラ検査ページ」にて説明しています。
腺腫性ポリープや悪性化が考えられる過形成性ポリープ(2cmを超えるもの、徐々に大きくなっているもの、いびつな形をしているものなど)は、内視鏡で病変組織の一部を採取して内部の状態を詳しく調べます。(※全ての胃ポリープに行う検査ではありません。)
胃粘膜の表面には神経がないため、検査時に痛みを感じることはありません。
胃ポリープは、見つかったポリープのタイプによって治療方針が異なります。
胃底腺ポリープががん化する可能性は低いため、経過観察や治療は必要ありません。内視鏡検査で胃底腺ポリープだと確認できた場合、そのまま放置していて問題ありませんが、100個以上のポリープが多発している場合には「家族性大腸腺腫症*4」の可能性も考えられるため、大腸内視鏡検査を行うこともあります。
*4 家族性大腸腺腫症:遺伝により100個以上の多数の腺腫性ポリープが腸粘膜に発生する病気で、胃の中にもポリープが広がるケースがあります。
過形成性ポリープは、基本的に経過観察となります。1年に1度、定期的に内視鏡検査を受けていただき、ポリープの状態に変化がないかを確認します。
また、内視鏡検査でピロリ菌陽性が判明した場合には、ピロリ菌の除菌療法*5も検討します。
ただし、2cmを超える大きなポリープや徐々に大きくなるポリープの場合、がんの可能性も考えられるため、病理検査を行い、結果に応じて切除を検討します。
また、ポリープからの出血で貧血が起きている場合も切除を行うことがありますが、血液をサラサラにする薬(抗凝固剤や抗血小板薬など)を服用していると、出血量が増える恐れがあるため注意が必要です。
*5 ピロリ菌除菌療法:除菌剤(2種類)や胃の炎症を抑える薬を1日2回7日間服用することで胃の中のピロリ菌を殺す治療。治療終了後、4週間以降に効果の判定を行います。2回までは健康保険が適用できます。
ピロリ菌の検査・除菌治療について、詳しい内容は「ピロリ菌」で説明しています。
腺腫性ポリープの場合も原則、過形成性ポリープと同様に1年に1度の内視鏡検査で経過観察を行います。腺腫のサイズが小さく、特別な変化が起きなければ切除の必要はありません。
ただし、2cmを超える大きな腺腫や、赤みが強い、凹みがあるなど、通常と異なる腺腫の場合、一部にがんが併存している可能性があるため切除を検討します。
胃ポリープの切除治療は内視鏡を使用して行うことが可能です。
内視鏡治療は外科手術に比べ、患者さんの負担が少ないのが大きなメリットですが、切除後には出血の可能性もあるため、通常、5日程度の入院が必要になります。
「高周波スネア」と呼ばれる輪っか状のワイヤーをポリープの根元に引っかけ、高周波電流を流して焼き切る、もしくはワイヤーを締めて根元を壊死させる方法です。
キノコのように盛り上がっている有茎性で、1~1.5cm程度の小さなポリープが適応になります。
切除したポリープは詳しい組織検査をすることで、良性・悪性の診断や悪性度の判定を行うことが可能です。
無茎型などの比較的平坦な病変の切除を行う方法です。
平たいままでは切除が難しいため、病変の粘膜に生理食塩水を注入し、盛り上がった状態にしてからスネアで病変部を焼き切ります。
病変部をマーキングし、粘膜下層に薬剤を注射して病変を浮かせた状態にしてから切開用の高周波ナイフで切り取り、少しずつはぎ取って完全に病変部を切除します。
2cmを超えるポリープや早期がんなど、比較的広範囲な病変でも開腹することなく、内視鏡で治療を行うことができるのが大きなメリットです。
基本的に胃底腺ポリープが自然に消えることはありません。 しかし、過形成ポリープはピロリ菌の除菌治療を行うことによって数が減ったり、小さくなったりすることがあります。
一般的に胃の弱い方や胃に炎症がある方は、胃ポリープになりやすいと考えられます。 胃は非常にデリケートな臓器であるため、規則正しい生活を心がけ、ストレスを溜めないように気を付けましょう。また、「よく噛んで食べる」「刺激の強い食品や香辛料の摂取を控える」「お酒の飲み過ぎに気を付ける」など、日頃から胃に優しい食生活を心がけることも大切です。
健康診断などで胃にポリープが見つかると、「将来がんになるのでは……」と心配になってしまう方も多いのではないでしょうか?
胃ポリープは基本的に良性の病変であり、悪性化する可能性は低いものがほとんどですので、あまり心配し過ぎずに内視鏡検査を受けていただくことをおすすめします。
内視鏡検査はつらいと敬遠されがちですが、ポリープの確定診断には欠かせない検査です。
当院では苦痛のない検査を目指しており、患者さまのストレスをできるだけ減らすため、鼻から細いスコープを挿入する経鼻内視鏡を行っておりますので、比較的楽に検査を受けていただくことが可能です。ご希望により、鎮静剤や鎮痛剤などを使用して行うことも可能ですので、お気軽にご相談ください。