疾患
disease

潰瘍性大腸炎(UC)

潰瘍性大腸炎とは、大腸粘膜が炎症によって傷つくことで、血便・下痢・腹痛が起こる慢性疾患です。患者数は年々増加傾向にあり、若者から高齢者まで幅広い層で発症します。今のところ、原因が明らかになっていないため、完治させる治療法はなく、国による「難病指定」を受けています。
しかし、規則正しい生活や炎症を抑えるお薬の服用など適切な治療を行うことで、患者さんの多くは症状の改善・寛解(症状が穏やかな状態)を維持でき、発症前と同じような生活を送られています。一方で、再燃と寛解を繰り返しやすく、さらに皮膚・関節・眼の病気を合併することがあるため、症状がなくとも服薬や定期検診を続け、長期にわたって治療に取り組む必要がある病気です。
血便や下痢・腹痛が続く方は、一度お気軽にご来院ください。

潰瘍性大腸炎とは?

潰瘍性大腸炎の疫学

これまで潰瘍性大腸炎はアメリカ人に多く、日本人には稀な病気と捉えられていましたが、1970年以降増加しており、現在の患者数は約22万人(2019年)と推定されています。アメリカの半分以下の数字ですが、食生活の欧米化などが要因となり、今後も増加傾向は続くと予想されています。発症の性別差はなく、男女とも20代30代での発症が多いですが、幅広い層で発症します。

潰瘍性大腸炎の病変分類

潰瘍性大腸炎は、病変(炎症)の広がり方によって、次の通り分類されます。
通常、病変は直腸から口側(下から上)に広がり、炎症範囲が広い方が狭いタイプと比べて、重症傾向にあります。

  • 直腸炎型
    病変が「直腸」だけに存在するタイプ。
  • 左側大腸炎型
    病変が結腸の脾わん曲部(下行結腸と横行結腸の境)まで広がったタイプ。
  • 全大腸炎型
    病変が脾わん曲部を超えて、全大腸にまで広がったタイプ。

(図)潰瘍性大腸炎の病変分類

上記の3タイプのほか、直腸・左側大腸には炎症がなく、盲腸・上行結腸など右側大腸のみ炎症がある「右側大腸炎型」、直腸に病変がなかったり病変部が散在したりする「区域性大腸炎型」などの炎症が連続しないタイプも最近増えています。

潰瘍性大腸炎の症状

潰瘍性大腸炎の主な症状は、「血便(粘血便)」「下痢」「腹痛」です。炎症が広がると、発熱・体重減少・貧血などの全身症状が現れます。また、潰瘍性大腸炎では、症状が起こる「活動期」と症状が落ち着いている「寛解期」を繰り返します。症状が落ち着いたからと、自己判断で治療を中断しないようにしましょう。

潰瘍性大腸炎の重症度

症状(排便回数・血便)、全身症状の有無(発熱・頻脈・貧血)、炎症マーカー(赤沈・CRP)の程度により、軽症・中等症・重症に分けられます。なお、軽症では通院治療が可能ですが、重症の場合には入院治療となります。

  • 軽症
    排便回数4回以下、血便が無/少量、頻脈・貧血・炎症マーカーが正常
  • 中等症
    軽症と重症の間
  • 重症
    排便回数が6回以上、大部分を血液とする血便、37.5℃以上の発熱、90回/分以上の頻脈、Hb10g/dL以下の貧血、赤沈30mm/h以上かCRP3.0mg/dL以上の炎症値など、6項目のうち4項目以上を満たすもの

潰瘍性大腸炎の合併症

潰瘍性大腸炎では腸管からの出血、腸管の狭窄(きょうさく:細くなること)・閉塞、大腸がんなどの腸管合併以外に、膝・足首などの関節炎、虹彩炎(こうさいえん:目の茶色い部分である虹彩の炎症)、膵炎(すいえん)、結節性紅斑(足首に多く痛みのある赤い発疹)・壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう:足に多い病変で深い潰瘍)など全身の合併症が現れることもあります。

潰瘍性大腸炎の原因

今のところ潰瘍性大腸炎の原因は解明されていませんが、近年の研究では遺伝的素因と環境的素因が複雑に絡み合うことで、腸管の過剰な免疫反応を引き起こして発症していると考えられています。

<遺伝的素因>

  • 遺伝素因
    潰瘍性大腸炎は遺伝性の病気ではありませんが、体質が似やすい親兄弟では家族歴(家族に患者さんがいる)がない方と比べて、発症しやすい傾向があります。

<環境的素因>

  • 過労・睡眠不足などのストレス
  • 動物性脂質が多い食べ物(肉類・乳製品・バターなど)、砂糖・清涼飲料水の過剰摂取、食物繊維の摂取不足などの食習慣
  • 衛生環境
  • 腸内細菌の関与

潰瘍性大腸炎の検査・診断

潰瘍性大腸炎が疑われる場合、「現在の状態が活動期/寛解期なのか」「重症度」「大腸に炎症が起こる別の病気ではないのか」などを確認するため、様々な検査を行います。
また、治療後も様々な検査を適宜行います。

潰瘍性大腸炎の検査

  • 問診
    便の状態・症状・全身状態・症状が繰り返されているか、家族歴・生活習慣・最近海外旅行に行ったか、抗菌薬の服用の有無などについて、お伺いします。
  • 便潜血検査・便培養検査
    便潜血検査は便の中に血液が混じっているかを調べる検査で、いわゆる「検便」です。便培養検査は便中の細菌・寄生虫の有無を調べて、感染症によって血性下痢が引き起こされていないかを鑑別する検査です。
  • 血液検査
    炎症具合、貧血・栄養状態を調べるほか、薬剤の効果・副作用のチェック目的でも行います。
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
    大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入して、大腸粘膜の炎症の程度・範囲を詳しく確認します。似たような症状がみられる他の腸炎・大腸の病気の鑑別や、同時に大腸粘膜の一部を採取して病理診断を行う「生検」も可能です。
    当院では「苦痛の少ない内視鏡検査」を目指して、二酸化炭素(炭酸ガス)で送気しながら、鎮静剤を用いて寝ている間に検査を行います。従来の空気送気と比べて、検査後の腹部膨満感・不快感などが起こりにくいです。ほかにも、検査時に短い波長の光を照射することで早期の大腸がんが見つけやすくなる「NBI内視鏡システム」の導入、感染予防対策として内視鏡の洗浄・消毒にはガイドライン*1推奨の過酢酸(≒お酢)を使用するなど、安心して大腸カメラをお受けいただけるような環境づくりに努めております。
    *1(参考)消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド
    http://www.kankyokansen.org/modules/publication/index.php?content_id=14
  • 大腸造影検査(注腸造影検査)
    肛門より造影剤(バリウム)と空気を注入して、X線撮影によって大腸の形状・粘膜の状態・炎症や腫瘍の有無を調べます。

そのほか、他の病気との鑑別を行うため、腹部超音波検査・腹部CT検査・MRI検査などを適宜行います。

潰瘍性大腸炎の診断

日本では厚生労働省研究班によって、「潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準治療指針」が毎年改訂発行されています。当院では、感染性腸炎などの除外診断をした上で、基準に則って総合的に判断しています。令和3年版(2021年)では、次の条件を満たす必要があります。

  • 持続性または反復性のある粘血・血便あるいは既往がある
  • 内視鏡検査または注腸X線検査で一定の所見(粘膜のただれ・潰瘍など)がある
  • 大腸組織を使った生検で、腸炎に関わる一連の粘膜変化がある

潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎の治療の基本は、薬物療法による内科的治療です。根治は難しいですが、炎症を抑え症状を和らげ、寛解状態を長く維持することは可能です。使用するお薬の種類・投与方法は、病変の範囲(分類)・重症度により異なります。

薬物療法(内科的治療法)

次のようなお薬で、腸の炎症を抑えて、症状をコントロールしていきます。

(図)潰瘍性大腸炎の治療薬・治療法の位置づけ

  • 5-ASA製剤(5-アミノサリチル酸製剤)
    潰瘍性大腸炎の基準薬として、軽症~中等症の活動期の寛解導入に使われます。経口薬や肛門から薬を入れる局所製剤(坐薬・注腸剤)があり、下痢・血便・腹痛などの症状の緩和と再燃予防に効果があります。副作用を軽減した改良新薬が登場しており、服用を続けることで、大腸がんリスクの軽減効果も期待できます。
  • 副腎皮質ステロイド薬
    ステロイド薬は炎症や免疫反応を強力に抑えますが、再燃予防効果は認められません。局所製剤(坐薬・注腸薬・注腸フォーム剤*2)は軽症~中等度、経口薬は中等症、注射薬は重症例に使用します。長期の大量服用では副作用が問題となるため、効果が得られれば、徐々に減量して最終的には投与を中止します。
    *2注腸フォーム剤:お尻から入れるムース状のステロイド薬。大腸に直接薬効が届くので、副作用が少ない。
  • 抗TNF-α拮抗薬
    炎症が強く、ステロイド薬などの既存治療では効果不十分な中等症~重症ケースで使用する点滴や皮下注射薬です。炎症を引き起こす生体物質(TNF-α)の作用を抑えます。
  • JAK阻害薬
    既存治療では効果不十分なケースの中等症~重症に用いる経口薬です。潰瘍性大腸炎には2022年3月に追加承認されました。過剰に作られている炎症を引き起こす物質(サイトカイン)の作用を抑えます。
  • 抗α4β7インテグリン抗体製剤
    既存治療では効果不十分なケースの中等症~重症に用います。2018年に適応追加になった点滴薬です。腸管に選択的に作用するので、全身への作用が少なくて済みます。
  • 血球成分除去療法
    国内で開発された治療法で、血液を体外循環させて、血液中の異常活性化した白血球を除去してから、体内へ戻します。重症例やステロイド薬で効果不十分な患者さんの活動期治療に用いられます。
  • 免疫調節薬・免疫抑制薬
    ステロイド薬の減量・中止に伴って症状が悪化する場合に用います。通常、入院での治療となります。重篤な副作用があるため、治療前の血液検査が必須です。

※当院では対応していないお薬や治療法を行う場合、必要に応じて、さいたま赤十字病院など基幹病院をご紹介します。

外科手術

重症で内科治療が無効、大量出血、穿孔(大腸に穴が開く)などでは「大腸全摘手術」が行われます。近年は、人工肛門ではなく、小腸で便を溜める袋を作って肛門につなぐ手術が主流です。術後は普通の人と同じような生活を送れます。
※必要に応じて、さいたま赤十字病院など基幹病院をご紹介します。

よくあるご質問

潰瘍性大腸炎は予防できますか?

今のところ、確実な予防法は見つかっていませんが、栄養バランスの良い食事・十分な睡眠・適度な運動・ストレス発散など規則正しい生活を送ることが発症・増悪予防に繋がります。また、潰瘍性大腸炎患者には虫垂切除術歴がある方が少なく、「虫垂炎と潰瘍性大腸炎が二者択一的な炎症反応である」とする調査結果が発表*3されています。20歳頃までの虫垂切除術が潰瘍性大腸炎患者の子どもの発症リスク低減や、発症後の潰瘍性大腸炎治療に役立つことも判明しています。
*3(参考)虫垂切除術と潰瘍性大腸炎の保護|The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE March 15, 2001 Vol. 344 No. 11
https://www.nejm.jp/abstract/vol344.p808

潰瘍性大腸炎でも旅行できますか?

旅行は可能ですが、長期旅行の場合には医師にご相談ください。旅行時も変わらず服薬できるよう、薬の量や薬の名前を確認しておきましょう。特に海外旅行では、薬の一般名を書き留めておくと安心です。

まとめ

潰瘍性大腸炎の症状には波があり、「活動期」と「寛解期」を繰り返す特徴がありますが、平均寿命は一般の人と比べて変わりません。しかし、再燃・大腸がん予防や寛解維持のためには、症状がなくとも「服薬の継続」「定期的な検診」が必要な病気です。潰瘍性大腸炎の診断には大腸の状態の確認が必要となりますが、当院では「いつの間にか終わっていた大腸カメラ」を目指して、楽に検査が受けられるような環境を整えています。血便がみられる方は、一度お気軽に当院までご相談ください。

記事執筆者

しおや消化器内科クリニック 院長 塩屋 雄史

出身大学

獨協医科大学 卒業(平成11年)

職歴・現職

獨協医科大学病院 消化器内科入局
佐野市民病院 内科 医師
獨協医科大学 消化器内科 助手
佐野医師会病院 消化器内科 内科医長
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 医師
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 副部長
しおや消化器内科クリニック 開業(平成26年)

専門医 資格

日本内科学会認定内科医
日本肝臓学会認定肝臓専門医
日本医師会認定産業医