急性気管支炎は、咳(せき)や痰(たん)などの風邪症状がでる疾患です。
多くの治療は対処療法なので、咳を抑えて痰が出やすくする薬を服用しながら、ゆっくり休養を取って症状が改善するのを待ちます。
また、原因を特定することが難しく、周囲で「インフルエンザ」「アデノウイルス」「RSウイルス」などが流行していると、その情報から検査を進めていくと原因が特定できることがあります。
周りで流行しているものがあれば、受診した時に伝えましょう。
急性気管支炎で抗生物質が必要になることはまれで、処方されないことが多いです。免疫力を上げて細菌やウイルスによる炎症が落ち着くのを待ちます。
ただ、症状が重くなると肺にまで炎症を引き起こし、肺炎になることもあります。疑わしい症状がある時は早めに受診することをおすすめします。
気管支炎とは、気管支に炎症があり、咳や痰などの呼吸器の症状を引き起こす病気です。
「急性気管支炎」は、数日から数週間で治まるのに対して、「慢性気管支炎」は数か月から数年にわたって咳や痰の症状が続く時に診断されます。
一般的に気管支炎といわれる場合には、「急性気管支炎」に分類されます。
発症する原因は、「ウイルス」「細菌」などの感染症が多く、そのほかには大気汚染物質によっても発症することがあります。
急性気管支炎の治療は、原因に応じて異なりますが、ウイルスによる感染の場合には「症状を緩和する治療」が行われます。
一般的には、自然に治癒することが多い急性気管支炎ですが、悪化すると呼吸器障害を引き起こすこともあるので注意が必要です。
鼻や口から吸いこんだ空気の通り道の事を「気道」といいますが、気管支は声帯から下の気道にあたります。
気管支は枝分かれしながら、肺胞につながり、酸素と二酸化炭素のガス交換が行われます。
気管支はこの空気の通り道の気管支に炎症が生じる病気です。
原因としては「ウイルス」からの感染が多くみられます。たとえば、「インフルエンザウイルス」「RSウイルス」「コロナウイルス」「アデノウイルス」などが代表的です。ウイルスからの感染症は、治った後でも炎症が残って、その後も数週間咳が続くことがあります。
細菌による急性気管支炎の割合は20人中1人以下で、割合は低くなります。ただし、同じ地域で多くの人が同時期に急性気管支炎が発症した集団感染の場合には、細菌感染が疑われます。細菌感染では、「マイコプラズマ」「百日咳」「肺炎球菌」などが挙げられます。
そのほかには、「化学物質の吸引」も急性気管支炎の可能性があります。たとえば、住宅用洗剤の揮発性の塩素剤を、換気をせずに締め切った状態で使用すると、発症するおそれがあります。お風呂用の防カビスプレーなどを使用する時には、マスクを用して、十分な換気を行いましょう。
急性気管支炎の症状は、一般的に風邪症状と同じで、「鼻水」「のどの痛み」「全身の倦怠感」などさまざまな症状があります。たとえば、「アデノウイルス」の場合には、腸管にも感染することが多く、下痢の症状が多くみられます。
また、「インフルエンザウイルス」の場合には、症状が強く、急激な発熱や倦怠感などがみられます。症状が強い場合には、肺炎まで引き起こしてしまう可能性がありますが、多くは高齢の方か免疫に影響のある持病を持っている方が多いです。
そのほかには、お子さんに多い「マイコプラズマ肺炎」がありますが、症状としては咳が長い間続きます。最初は痰が絡まない乾いた咳が多いですが、だんだん痰が絡んだような咳になり、白い粘液が出ることがあります。さらに時間が経過してくると、痰が黄色や緑がかった色味に変化します。痰の色の変化は、炎症を引き起こしている細菌やウイルスの排出によるものなので、悪化しているわけではありません。
また、お子さんの場合には、大人に比べると気道が狭いため、炎症があると気道の通り道が狭くなってヒュウヒュウと音が鳴ることがあります。この状態では、炎症が強く気管が狭くなって重症化している可能性が考えられますので、早めに受診しましょう。
気管支炎の原因としては、細菌やウイルスの感染症が多いですが、他にも「化学物質」「環境汚染」が原因で発症することも考えられます。これらの原因を特定するためには、発症した経緯などを詳しくヒアリングして診断することが大切です。
なお、急性気管支炎が疑われる場合でも、軽度である場合は検査を行うことは少なく、咳・痰の症状だけであれば経過観察をすることが多いです。
発熱がある場合で、「インフルエンザウイルス」「アデノウイルス」「RSウイルス」などが疑われる時には、原因を特定するために検査することがあります。検査方法は、鼻や咽頭に綿棒を入れて採取した粘液で検査が行われ、検査は迅速検査で行われるため、すぐに検査結果を確認できます。
また、発熱が長引く時や、肺うっ血を示す呼吸音があると、肺炎の可能性があるため、レントゲン撮影や場合によってはCT撮影をすることもあります。
急性気管支炎の治療は原因によって大きく異なりますが、ウイルスの場合には根本的な治療はありません。解熱のための解熱剤や全身症状を緩和させるために「イブプロフェン」「アセトアミノフェン」を使用することがあります。あとは、十分な水分を補給して、休養を取ることが大切です。
急性気管支炎の原因がインフルエンザの場合には、抗インフルエンザ薬が使用されることがあります。発症後48時間以内であれば抗インフルエンザの効果が期待できます。
しかし、発症後すぐにはインフルエンザウイルスが確認されないこともあり、1度受診した後に熱が下がらず、再度受診した時にインフルエンザウイルスと診断されることもあります。
時間が経過していると、薬の効果が期待できないこともあるため、医師の判断で処方されます。一般的な風邪の場合と異なり、インフルエンザは感染力が強く、咳などで飛び散ったウイルスからも感染するため、感染に気付かずに学校や職場に出社すると、感染を広げる可能性があります。疑わしい症状がある時は必ず受診をしましょう。
これらの治療が必要な場合には、抗生物質を使用することもあります。ただし、原因になる細菌によって効果を発揮する抗生物質が異なり、特定が難しい場合もあります。
また、ウイルスが原因だった時には、抗生物質に効果がありません。そのため、病歴や検査所見を確認して、原因が特定できた場合にのみ抗生物質が処方されます。
小児の場合には、症状が軽い場合には、家の中を加湿して咳が出にくいようにしましょう。
気管支が狭くなっている時に、ゼイゼイする呼吸になった場合には、気管支を広げる「気管支拡張薬」を使用します。また、咳止め薬や痰の出やすくなる薬を使用して、症状の緩和を期待します。
急性気管支炎は風邪と似た、咳・痰などの症状が多いです。治療は咳や痰を抑える対処療法が多く、免疫を上げて症状を緩和していきます。原因を特定することは難しいですが、周囲で集団感染している場合には、その疾患にかかっている可能性が高いので、受診時に主治医に伝えておくと、スムーズに原因を特定しやすくなります。
また、急性気管支炎だけでなく、症状が長期に続く慢性気管支炎もあります。主な原因は「たばこ」なので、すぐに禁煙をすることが大切です。
気になる症状が出た際には、受診して早めに治療を開始して症状を改善しましょう。